1974年、メルボルン大学で講師を務めていたリチャード・ロブソンは、初年級の学生講義用に結晶構造模型を作製していた。彼は原子を表す木製の球に一定角度の穴を開けて化学結合を表す棒でつなぐとおのずと正しい構造が組み上がることに気づき、原子固有の性質を利用して異なる分子どうしを結合すれば新規の分子構造ができるのではないかと着想した[10] [11]。1989年、彼はこのアイデアをもとに、銅イオンとそれに引きつけられるニトリル基を先端に持つ有機分子を結合させたCu[C(C6H4CN)4]BF4などの結晶性高分子を合成した [12][13]。
1990年代に入り、金属と配位子を使った多くの分子構造体を試作されたが、不安定で壊れやすいものであった[11]。
北川進は、新規の構造と性質を持つ銅を含んだ結晶性高分子についての報告に興味を持ち、1990年からこの分野の研究を始めた[11]。1992年、銅イオンに有機分子のピラジンやテトラメチルピラジンを配位させた新しい高分子結晶体を報告した[14]。そのひとつは2次元の層状化合物で、層の間の空間にアセトン分子を含むことができた。その後も研究を継続し、1997年には可逆的に気体分子を吸着できる構造体を合成した[15]。これはコバルト、ニッケル、亜鉛の各イオンに4,4’-ビピリジンが配位した、メタン、窒素、酸素分子が出入りできる3次元の多孔性金属有機構造体である。北川らは「多孔性配位高分子(PCP)」という名称で概念の体系化を行なった[16]。
オマー・M・ヤギーは1995年にカルボキシレート系配位子を用いた結晶を合成し、「金属有機構造体(MOF)」と名付けた。この成果は、安定かつ結晶性の多孔質材料創出への道を開いた[17] 。ヤギーはまた1998年に二次構築単位という、多孔性を有する骨格を構築するための構成要素として機能する金属カルボキシレートクラスターの概念を導入し、この分野をさらに発展させた[18]。この発明により精密な構造設計と機械的安定性の向上が可能となり、MOFが工業条件下でも多孔性を保持できるようになった。ヤギーはこれらの材料のガス吸着等温線を測定し、ガス貯蔵・分離用途への応用の道を示した[19]。

1999年、とても高いポロシティを示す初のMOFであるMOF-5(英語版)の開発というブレークスルーがあった[20]。酸化亜鉛クラスターとテレフタレート配位子から構成されるMOF-5は、高い比表面積、構造的頑健性、汎用性といった特異的性質を示し、ガス貯蔵・分離から触媒・センシングに至る応用分野を持つ基盤技術としてのMOFの地位を確立した。この発明は、右図の2000年における転換点が示すように、金属有機構造体(MOF)の開発と応用に劇的な影響を与えた。
MOFは主に2つの構成要素からなる:二次構築単位(Secondary Building Unit, SBU)と呼ばれる無機金属クラスターと、リンカー(Linker)または架橋基(Strut)と呼ばれる有機分子である。このため、MOFはしばしば「ハイブリッド有機無機材料」と呼ばれる[1]。リンカーは通常、1価、2価、3価、または4価の配位子である[21]。金属とリンカーの選択がMOFの構造、ひいてはその特性を決定する。例えば、金属の配位数は、金属に結合できる配位子の数やその方向を定め、細孔のサイズや形状に影響を与える。
| 無機材料の次元 | |||||
|---|---|---|---|---|---|
| 0 | 1 | 2 | 3 | ||
有機材料の次元 |
0 | 分子複合体 (Molecular complexes) | ハイブリッド無機チェーン (Hybrid inorganic chains) | ハイブリッド無機レイヤー (Hybrid inorganic layers) | 3D無機ハイブリッド (3D inorganic hybrids) |
| 1 | チェーン配位ポリマー (Chain coordination polymers) | 混合無機有機レイヤー (Mixed inorganic-organic layers) | 混合無機有機3D骨格 (Mixed inorganic-organic 3D framework) | ||
| 2 | レイヤー状配位ポリマー (Layered coordination polymer) | 混合無機有機3D骨格 (Mixed inorganic-organic 3D framework) | |||
| 3 | 3D配位ポリマー (3D Coordination polymers) | ||||
MOFの構造を記述し体系化するため、命名法体系が開発された。MOFのサブユニットである二次構築単位は、複数の構造に共通するトポロジーで記述できる。各トポロジー(ネットとも呼ばれる)には、太字の小文字3文字で記号が割り当てられる。例えばMOF-5(英語版)はpcuネットを有する。

金属クラスターには架橋配位子(英語版)が結合する。MOFにおいて、代表的な架橋配位子はジカルボン酸およびトリカルボン酸(英語版)である。これらの配位子は通常、剛直な骨格を有する。例としては、ベンゼン-1,4-ジカルボン酸(H2bdcまたはテレフタル酸)、ビフェニル-4,4′-ジカルボン酸(H2bpdc)、およびトリカルボン酸であるトリメシン酸が挙げられる。
MOFの開発における極めて重要な側面は、その結晶構造がX線結晶構造解析法によって決定可能であることである[23]。多くのMOFは良好な結晶性を示すため、その3次元構造を正確に決定できる。これにより、MOFの細孔内で起こる反応を研究し、反応中間体の構造決定が可能となった[24]。
MOF化学は配位化学と固体無機化学から出発し、新たな分野として発展した。MOFは、合成プロセスを通して不変の架橋有機配位子から構築される[27]。ゼオライト合成では、「テンプレート」と呼ばれる、無機骨格の構造成長に影響を与えるイオンがしばしば用いられる。テンプレートイオンは後段階で除去される。MOFでは、骨格は二次構築単位(SBU)と有機配位子によってテンプレート化される[28][29]。
水素貯蔵を目的としたMOFに有用なテンプレート化手法として、N,N-ジメチルホルムアミドや水などの金属と結合する溶媒の使用が挙げられる。この場合、溶媒を除去すると金属サイトが露出し、水素分子がこれらのサイトに結合できるようになる[30]。
MOFの化学を進展させる上で特に重要な4つの進展があった[31]。
- 金属含有単位を安定形状に保持する幾何学的構築原理。設計合成でターゲットとすべきトポロジーの同定につながっただけでなく、恒久的な多孔性を達成する核心点となった。
- 構造のトポロジーを変えずにサイズと性質を変化させるisoreticular原理の適用。超高ポロシティと大きな細孔開口部を有するMOFが実現された。
- 合成後の改質。有機ユニットや金属有機錯体をリンカーと反応させることでMOFの機能性が向上した。
- 単一骨格内に複数の機能を組み込んだ多機能性MOFの実現。
MOF中の配位子は通常可逆的に結合するため、結晶の成長速度が遅い中で格子欠陥が再溶解されやすく、ほぼ平衡状態に達した欠陥密度を持つミリメートル規模の結晶が得られる。ソルボサーマル合成法(Solvothermal synthesis)は、結晶が数時間から数日かけて成長するため、構造決定に適した結晶の育成に有用である。しかし、MOFを消費財の貯蔵材料として利用するには、その合成を大幅にスケールアップする必要がある。MOFのスケールアップは広く研究されていないが、複数の研究グループがマイクロ波を用いて溶液からMOF結晶を急速に核生成できることを実証している[32][33]。この「マイクロ波補助ソルボサーマル合成(microwave-assisted solvothermal synthesis)」と呼ばれる技術は、ゼオライト研究分野で広く用いられており[27]、数秒から数分でマイクロメートル規模の結晶を生成し[32][33]、収率は従来の低速成長法と同等である。
メソポーラス材料MIL-100(Fe)のような一部の金属有機構造体(MOF)は、室温およびグリーン溶媒(水やエタノール)中で、スケーラブルな合成法によって穏和な条件下で得ることができる[34]。
溶媒を用いない結晶性金属有機構造体の合成も報告されている[35]。酢酸金属と有機配位子前駆体を混合し、ボールミルで粉砕する。この方法によりCu3(BTC)2を一定の収率で迅速に合成可能である。溶媒を用いずに合成したCu3(BTC)2の形態は市販のBasolite C300と同一であった。ボールミル内の高い衝突エネルギーによる成分の局所的な溶融が反応を促進すると考えられている。また、ボールミル内反応で副生成物として生成する酢酸が、ボールミル内で溶媒効果を発揮し反応を助けた可能性もある[36] 。Cu3(BTC)2の機械化学的合成において少量のエタノールを添加すると、得られる材料の構造欠陥量が大幅に減少することが示されている[37]。
溶媒を使用しないMOF薄膜および複合材料の合成法の一つは、化学気相成長法(CVD)によるものである。このMOF-CVD[38]は、ZIF-8に対して初めて実証され、2段階からなる。第1段階では金属酸化物の前駆体層を堆積させる。第2段階では、これらの前駆体層を昇華した配位子分子に曝露し、MOF結晶格子への相転移を誘起する。この反応中に生成する水分子が転移を誘導する上で重要な役割を果たす。このプロセスは産業用微細加工基準に準拠したクリーンルームプロセスへのスケールアップに成功した[39]。
配向性薄膜としてのMOFの成長については数多くの方法が報告されている。しかし、これらの方法はごく少数のMOFトポロジーの合成にしか適さない。その一例が蒸気補助変換法(Vapor-Assisted Conversion、VAC)であり、これはいくつかのUiO型MOFの薄膜合成に利用可能である[40]。
ハイスループット(High-Throughput、HT)法は、コンビナトリアル化学の一部であり、効率向上のためのツールである。ハイスループット法にはコンビナトリアル法と並列合成法の2つの合成戦略が存在する。コンビナトリアル法では、全ての反応が1つの容器内で進行し、混合生成物が生じる。並列合成法では、反応が異なる容器内で進行する。さらに、薄膜法と溶媒ベース法との区別がなされる[41]。
ソルボサーマル合成法は、対流式オーブン内のテフロン製反応器あるいはマイクロ波オーブン内のガラス製反応器を用いて(ハイスループットマイクロ波合成)行われる。マイクロ波オーブンの使用は反応パラメータを劇的に変化させることがある。
ソルボサーマル合成に加え、連続流反応器における超臨界流体溶媒の利用も進展している。超臨界水は2012年に初めて銅・ニッケル系MOFの合成に用いられ、わずか数秒で反応を完了させた[42]。2020年には、超臨界水法と同等の時間スケールで連続流反応器と超臨界二酸化炭素(英語版)が用いられ、二酸化炭素の低い臨界点によりジルコニウム系MOFであるUiO-66の合成が可能となった[43]。
仮晶的複製(Pseudomorphic replication)
[編集]仮晶的鉱物置換現象は、鉱物相が平衡状態でない流体と接触する際に生じる。自由エネルギーを低減し初期相をより熱力学的に安定な相へ変換するため、再平衡化が進行する傾向があり、これには溶解と再沈殿の副過程が伴う[44][45]。
このような地質学的プロセスに着想を得て、適切な基板(例えばフッ素ドープ酸化スズ)への酸化アルミニウムの原子層堆積(ALD)法と、ソルボサーマルマイクロ波合成法を組み合わせることでMOF薄膜を成長させた例がある。酸化アルミニウム層は、構造形成剤として機能すると同時に、MOF構造の骨格を形成する金属ソースとしても作用する[46]。多孔性3次元金属有機構造体の構築は、マイクロ波合成法において行われる。具体的には、原子層堆積された基板を、高温下でDMF/H2O 3:1混合溶媒中のリンカー溶液に曝露する。同様の手法で、2015年にコバルトポルフィリンMOF(Al2(OH)2TCPP-Co; TCPP-H2=4,4′,4″,4‴-(ポルフィリン-5,10,15,20-テトライル)テトラベンゾエート)の合成が報告された。これは水溶液中のCO2をCOへ電気触媒変換するために構築された初のMOF触媒である[47]。
理論上は金属ノードと有機リンカーを適切に選択することで3次元構造と細孔の内部環境を制御できるものの、実際には、MOF系の不安定性のために望む機能を備えた目的の生成物を直接合成することはしばしば困難である。ゲスト分子や対イオン(英語版)の交換、溶媒の除去により機能性を追加できるが、依然として骨格の構成要素に限定される[48]。合成後の有機リンカーや金属イオンの交換は、この分野で拡大しつつある領域であり、より複雑な構造、機能性の向上、系の制御の可能性を開く[48][49]。
合成後修飾を用いることで、MOF内の有機リンカーを、配位子交換または部分配位子交換により新たなリンカーと置換できる[49][50]。この交換により、MOFの細孔構造、場合によっては全体的な骨格構造を特定の目的に合わせて調整することが可能となる。配位子交換は選択的吸着、ガス貯蔵、触媒としての利用を目的とした材料の微調整などに役立つ[49][30]。配位子交換を行うには、既製MOF結晶を溶媒で洗浄した後、新たなリンカー溶液に浸漬する。この交換反応には熱が必要となることが多く、数日単位の時間スケールで進行する[50]。合成後配位子交換により、温度・pH・その他の反応条件によりMOF合成中に分解してしまう官能基、あるいは供与基との競合により合成そのものを阻害する官能基をMOFに組み込むことも可能となる[49]。
合成後修飾法は、MOF内の既存金属イオンを新規金属イオンと置換するためにも用いられる。MOFの骨格構造や細孔構造を変化させることなく、完全な金属イオン交換反応が達成されている。合成後の配位子交換と同様に、合成後の金属交換は、あらかじめ合成されたMOF結晶を溶媒で洗浄した後、新たな金属の溶液に結晶を浸漬することで行われる[51]。合成後金属交換により、同一骨格でありながら異なる金属イオンを有するMOFを簡便に合成できる[48]。
合成後修飾は、配位子や金属自体の機能を変更するだけでなく、MOFの構造を多様にするためにも用いられる。合成後修飾を利用することで、MOFを高度に秩序立った結晶性材料から不均一な多孔質材料へと変換できる[52]。この技術によりMOF結晶内に独自の構造的・機能的特性を示す領域を設けることが可能となる。コアシェル型MOFやその他の層状MOFは、各層が独自の機能を有しながらも、ほとんどの場合層間で結晶学的に互換性を持つように合成されている[53]。
場合によっては、金属ノードは不飽和であり、様々な技術を用いてこの周囲を修飾することが可能である。配位子のサイズが細孔開口部のサイズと一致する場合、既存のMOF構造に追加の配位子を導入することが可能である[54][55]。金属ノードは有機配位子だけでなく無機化学種に対しても良好な結合親和性を示すことがある。一例として、金属ノードがウラニルイオンと結合を形成することが示されている[56]。
2次元金属有機構造体(MOF)を扱う場合、MOFの層間に配位子を取り込むことが可能である。方法の一つは、MOFの合成過程(デノボ合成と呼ばれる)において取り込むものである。この方法では、MOFの構成要素とターゲットの層間配位子を同時に反応させる。これによりMOFが形成されると同時に、配位子がMOFに配位する。もう一つの方法は合成後修飾であり、最も一般的な手法はソルボサーマル合成法を用いるものである。

配位子は通常、MOF内で金属ノードに配位する。配位を促進するため、MOFに使用する金属ノードと配位子がどう結合するかを慎重に見極めて選ぶ必要がある。2次元MOFにおいて金属ノード間にポルフィリンリンカーを用いる場合、第2のリンカーはポルフィリン内の金属を介してMOFに配位するとともに、ポルフィリンリンカー間の金属ノードにも配位することが可能であり、2つの配位サイトが存在する。一例として、亜鉛ノードとテトラキス(4-カルボキシフェニル)ポルフィリンリンカーから構成される2次元Zn2(Zntcpp) MOFが挙げられる。この構造では、光色変化性配位子であるビス(5-ピリジル-2-メチル-3-チエニル)シクロペンテン(bpmtc)をZn2(Zntcpp)層間に組み込んだ[57]。これらの2次元MOFは、第2のリンカーを導入しても結晶性を維持し、サスペンション以外では可変的な安定性を示す。様々な2次元MOF内に多様なリンカーを導入することで、幅広い応用が可能となる。

MOFは不均一系触媒としての可能性を秘めている[61]。その高い比表面積、調整可能な細孔構造、金属および官能基の多様性は、触媒としての利用に特に魅力的である。ゼオライトは触媒として極めて有用であるが[62]、Si/Al結合点の固定された四面体配位と2配位酸化物リンカーに制限され、既知のゼオライトは200種類未満である。この限られた種類とは対照的に、MOFはより多様な配位構造、多面体リンカー、補助配位子(F−、OH−、H2Oなど)を示す。また、1ナノメートルを超える細孔サイズを持つゼオライトを得ることは困難であり、ゼオライトの触媒としての応用は比較的小さな有機分子(一般的にはキシレン以下)に限定される。
さらに、MOF合成に一般的に用いられる合成条件は穏和であるため、繊細な官能基を骨格構造に直接組み込むことが可能となる。ゼオライトやその他の微細多孔性結晶性酸化物系材料では過酷な条件(例えば、有機テンプレートを除去するための高温焼成)が用いられるため、このようなことは難しい。金属有機構造体MIL-101は、クロムなどの遷移金属を組み込んだ触媒用途で最も広く用いられるMOFの一つである[63]。しかしながら、一部のMOF光触媒は水溶液中や強酸化条件下での安定性が極めて低い[64][65]。
ゼオライトは依然としてエナンチオピュアな形態で得られず、医薬品、農薬、香料産業などにおける不斉合成触媒としての応用が妨げられている。エナンチオピュアなキラル配位子またはその金属錯体をMOFに組み込むことで、効率的な不斉触媒が実現されている。一部のMOF材料は、多核サイト、ホスト-ゲスト応答、疎水性キャビティを組み合わせることで、ゼオライトと酵素の間のギャップを埋める可能性すらある。MOFの半導体としての性質も有用かもしれない。理論計算によれば、MOFは1.0~5.5電子ボルトのバンドギャップを持つ半導体または絶縁体であり、配位子の共役度を変化させることでこの特性が調整可能であることから、光触媒としての可能性が示唆されている[66]。

MOFを用いた触媒作用に関する最も初期の報告の一つは、2次元MOF(層状正方形格子)Cd(4,4′-bpy)2(NO3)2を触媒としたアルデヒドのシアノシリル化であった[67]。この研究は主にサイズおよび形状選択的なクラスレーションに焦点を当てていた。第2の報告は、単一のパラジウム(II)イオンを金属ノードとし、2-ヒドロキシピリミジノレートを支柱とする2次元正方形格子MOFによるものであった[68]。配位が飽和しているにもかかわらず、このMOF中のパラジウム中心はアルコール酸化(英語版)、オレフィン水素化、および鈴木C–Cカップリングを触媒する。少なくともこれらの反応では、金属ノードがPd(II)とPd(0)の中間体を往復する酸化還元振動が生じ、配位子の配位数が大きく変化する。もし全てのパラジウム中心が触媒活性を持つならば、これは元の骨格の不安定化と潜在的な破壊を確実に招くことから、基質の形状・サイズ選択性が観察されたことは触媒反応が不均一でありMOF内部で起きていることを示唆する。しかしながら、少なくとも水素化反応に関しては、触媒作用がMOF内の金属ノードではなく、MOFに取り込まれたパラジウムクラスターやナノ粒子表面や欠陥部位で発生している可能性を排除することは困難である。立方晶化合物であるMOF-5では、この「日和見主義的」なMOFベースの触媒作用が報告されている[69]。この材料は配位的に飽和したZn4Oノードと完全錯体化したBDC(benzene-1,4-dicarboxylic acid)架橋基で構成されており、トルエンとビフェニルに対してフリーデル・クラフツ-tert-ブチル化の触媒作用を示す。さらに、パラアルキル化がオルトアルキル化よりも強く優先される挙動は、反応物がMOFに取り込まれていることを反映していると考えられる。
多孔性骨格材料[Cu3(btc)2(H2O)3](通称 HKUST-1[70])は、直径約6オングストロームの窓を有する大きな空洞を持つ。配位した水分子は容易に除去でき、オープンな銅(II)サイトが残る。このルイス酸サイトがベンズアルデヒドやアセトンのシアノシリル化を触媒する[71]。
ブレンステッド酸触媒かルイス酸触媒かという観点で見ると、α-ピネンオキシドの異性化、シトロネラールの環化、α-ブロモアセタールの転位という3つの反応において生成物選択性が顕著に異なり、[Cu3(btc)2]が主にルイス酸触媒として機能していることを示している。また、触媒反応(例:シクロプロパン化(英語版))における生成物選択性および収率は、銅(I)やリンカーの不完全に脱プロトン化されたカルボン酸基などの欠陥部位の影響を受けることも報告されている[37]。
MIL-101([Cr3F(H2O)2O(BDC)3])は、大きな空孔を持つMOFであり、シアノシリル化反応の触媒である[72]。MIL-101に配位した水分子は容易に除去でき、クロム(III)サイトが露出する。クロム(III)は銅(II)よりもルイス酸性が強いため、MIL-101はアルデヒドのシアノシリル化反応においてHKUST-1よりもはるかに活性が高い。MIL-101の触媒サイトはHKUST-1とは対照的にベンズアルデヒドによる望ましくない還元を受けにくい。芳香族アルデヒドのルイス酸触媒によるシアノシリル化はMn3[(Mn4Cl)3btt8(CH3OH)10]を用いても行われている[73]。この材料は3次元細孔構造を有し、細孔径は10オングストロームである。原理的には、2種類のマンガン(II)サイトのいずれかが触媒として機能し得る。本触媒の注目すべき特徴は、(小分子基質に対しての)高い変換収率と良好な基質サイズ選択性であり、これらはチャネル局在型触媒作用とよく合致する。
MOFカプセル化アプローチには、ゼオライトカプセル化鉄(ポルフィリン)[74]およびマンガン(ポルフィリン)[75]系の酸化触媒作用に関する先行研究が役立つ。ゼオライト研究では一般に、酸化剤としてTBHPではなくヨードシルベンゼン(PhIO)が用いられてきた。この酸化剤の差異は機構的に重要である可能性が高く、比較を複雑にしている。簡潔に述べると、PhIOは単一の酸素原子供与体であるのに対し、TBHPはより複雑な挙動を示す。さらに、マンガンオキソ中間体からの酸素移動と、マンガン開始ラジカル連鎖反応の両方を通じて酸化が進行する可能性が考えられる。いずれの機構においても、この手法はオキソ架橋二量体形成と酸化分解の両方においてポルフィリンを安定化させる有望なアプローチである[76]。
有機架橋基またはキャビティ修飾子による触媒
[編集]MOFを用いた触媒反応のほとんどは、活性サイトとして金属イオンまたは金属原子を利用している。数少ない例外として、ニッケル2個と銅2個を含むMOFがある[77]。この化合物は、架橋基としてジピリジルとアミノ酸(L-またはD-アスパラギン酸)を併用している。配位化学構造上、アスパラギン酸のアミノ基は添加した塩酸によってプロトン化されないが、カルボキシル基の一方はプロトン化される。したがって、骨格に組み込まれたアミノ酸は、遊離アミノ酸とは異なる状態で存在し得る。ニッケル系化合物はチャネルが微細であるため多孔性はわずかである一方、銅系化合物は明らかに多孔性を示す。骨格のカルボン酸がブレンステッド酸性触媒として作用し、キャビティに侵入可能なエポキシド小分子の開環メタノリシス反応を最大65%の収率で促進する[78]。ただし、これより優れた均一系触媒は存在する。
[Cd(4-btapa)2(NO3)2]の式を持つ触媒用MOFの合成が報告されている[79]。このMOFは3次元構造を持ち、同一の鎖状ネットワークが対をなして構成されていながらも、分子サイズの細孔を有する。ノードは単一のカドミウムイオンであり、ピリジル窒素が八面体配位している。しかし触媒の観点から見て、この材料の最も興味深い特徴はゲスト分子がアクセス可能なアミド官能基の存在である。これらのアミド基はベンズアルデヒドとマロンニトリルのクネーフェナーゲル縮合反応を塩基触媒する能力を有する。ニトリルが大きい場合、反応はわずかに加速されるのみであり、触媒作用が主に材料表面ではなく材料内部の細孔中で進行することを示唆している。特筆すべき発見は、均一系溶液中では遊離架橋基による触媒作用が認められない点である。これはbptda分子間の分子間水素結合に起因する。したがって、このMOF構造は従来では得られなかった触媒活性を引き起こすのである。
興味深い別のアプローチとして、複数のエチレンジアミン分子それぞれが持つ2つの窒素原子のうち1つがクロム(III)に配位することで、MIL-101の内部構造を改変した報告がある[80]。エチレンジアミンの配位されていない自由端がブレンステッド塩基触媒として用いられ、ベンズアルデヒドとニトリルのクネーフェナーゲル縮合反応を促進した。
Kimらによる第3のアプローチも報告されている[81]。彼らはピリジン官能基を有する酒石酸誘導体と亜鉛(II)ソースを用いることで、POST-1と呼ばれる2次元MOFの合成に成功した。POST-1は1次元チャネルを有し、その断面は6つの3核亜鉛クラスターと6本の支柱によって形成される。6つのピリジン基のうち3つは亜鉛イオンに配位しているが、残る3つはプロトン化されチャネル内部に向けられている。中和されたとき、非配位ピリジル基は、反応物アルコールの脱プロトン化を促進することでエステル交換反応を触媒することが判明した。大きなアルコールを用いた場合に顕著な触媒作用が認められないことから、触媒作用はMOFのチャネル内で発生していることが強く示唆される[82]。

MOF構造中の金属はしばしばルイス酸として作用する。MOF中の金属は、骨格活性化後に除去できる溶媒分子や対イオンと配位することが多い。このような不飽和金属中心のルイス酸的性質は、配位した有機基質を活性化し、その後の有機変換を可能にする。不飽和金属中心の利用は、2004年に藤田誠らによってアルデヒドおよびイミンのシアノシリル化反応で実証された[83]。彼らは、直鎖状架橋配位子4,4′-ビピリジン(bpy)をCd(NO
3)
2で処理して得られた、組成{[Cd(4,4′-bpy)2(H2O)2] • (NO3)2 • 4H2O}のMOFを報告した。このMOF中のカドミウム(II)中心は歪んだ八面体構造をとり、エクアトリアル位に4つのピリジン、アキシャル位に2つの水分子を有し、2次元無限ネットワークを形成する。活性化により2つの水分子が除去され、金属中心は不飽和でルイス酸性を帯びる。金属中心のルイス酸性は、イミンがルイス酸性金属中心に付着してイミンの求電子性が高まるシアノシリル化反応で実証された。イミンのシアノシリル化反応では、ほとんどの反応が1時間以内に完了し、アミノニトリルが定量収率で得られた。
Kaskelらは、3次元MOFを不均一系触媒として用い、配位不飽和金属を用いた同様のシアノシリル化反応を行った[84]。本研究で使用した3次元骨格[Cu3(btc)2(H2O)3] (btc: ベンゼン-1,3,5-トリカルボキシレート) (HKUST-1(英語版))は、Williamsらによって最初に報告されたものである[85]。[Cu3(btc)2(H2O)3]の開放型骨格は、二量体の四カルボン酸銅ユニット(パドルホイール)から構築され、アキシャル位に配位した水分子とbtc架橋配位子が存在する。アキシャル位から2つの水分子を除去すると、多孔性チャネルを有する骨格が得られた。この活性化されたMOFは、293 K (20 °C)ではベンズアルデヒドのトリメチルシアノシリル化を非常に低い変換率(24時間で5パーセント未満)で触媒する。反応温度を313 K (40 °C)に上げると、72時間後に89%の選択性で、57%という良好な変換率が得られた。対照的に、同じ条件下でMOFなしのバックグラウンド反応では10%未満の変換率しか観測されなかった。しかし、この戦略にはいくつかの問題がある。
- アルデヒドが起こすCu(II)からCu(I)への還元により反応温度上昇に伴い骨格が分解すること、
- 強い溶媒阻害効果(THFなどの電子供与性溶媒が、Cu(II)サイトへの配位をアルデヒドと競合し、これらの溶媒ではシアノシリル化生成物が観察されなかったこと)、
- 一部の有機溶媒における骨格の不安定性
である。他の複数の研究グループも、MOF中の金属中心を触媒として利用することを報告している[73][86]。ここでも、一部の金属や金属クラスターの電子不足性が、生成するMOFを効率的な酸化触媒とする。森らは、アルコール酸化の不均一系触媒としてCu2パドルホイールユニットを有するMOFを報告した[87]。得られたMOFの触媒活性は、酸化剤としてH2O2を用いたアルコール酸化反応により評価された。このMOFは、第一級アルコール、第二級アルコール、ベンジルアルコールの酸化反応においても高い選択性を示した。Hillらは、バナジウムオキソクラスターV6O13を基本単位とするMOFを用いたチオエーテルのスルホキシド化(英語版)反応を実証している[88]。
機能性リンカーは触媒部位としても利用可能である。3次元MOF{[Cd(4-btapa)2(NO3)2] • 6H2O • 2dmf} (H34-btapa= 1,3,5-ベンゼントリカルボン酸トリス[N-(4-ピリジル)アミド], dmf = N,N-ジメチルホルムアミド)は、3座アミドリンカーとカドミウム塩によって構築され、クネーフェナーゲル縮合反応を触媒する[79]。4-btapa上のピリジン基は八面体構造のカドミウム中心に結合する配位子として機能し、アミド基は基質との相互作用に機能性を提供する。具体的には、アミド基の−NH基が電子受容体として、C=O基が電子供与体として作用し、有機基質を活性化して後続反応を促進する。
Fereyらは、高強度かつ高多孔性のMOF[Cr3(μ3-O)F(H2O)2(BDC)3] (BDC: ベンゼン-1,4-ジカルボキシレート)を報告した[89]。このMOFでは、不飽和クロム(III)中心を直接触媒サイトとして用いるのではなく、クロム(III)サイトにエチレンジアミン(ed)がグラフト(接ぎ木)されている。グラフトされたエチレンジアミンの非配位端が塩基触媒サイトとして機能する。edグラフト処理をしたMOFを用いてクネーフェナーゲル縮合反応を行ったところ、未処理骨格と比較して変換率が著しく向上した(98パーセント vs. 36パーセント)。触媒サイトをつくるためのリンカー修飾の別の例として、ジオール触媒的酸化反応の目的で、ヨウ素官能基化アルミニウム系MOF(MIL-53およびDUT-5)およびジルコニウム系MOF(UiO-66およびUiO-67)が挙げられる[90][91]。
触媒活性を持つ貴金属の担持は、MOFの不飽和金属サイトへ官能基をグラフトする(接ぎ木する)ことによって達成できる。エチレンジアミン(ed)はクロム金属サイトにグラフトされ、さらに修飾してパラジウムなどの貴金属を担持できることが示されている[80]。担持されたパラジウムは、ヘック反応においてPd/Cと同等の触媒活性を示す。ルテニウムナノ粒子は、MOF-5骨格に担持されると複数の反応で触媒活性を示す[92]。このルテニウム担持型MOFはベンジルアルコールのベンズアルデヒドへの酸化を触媒するが、MOFの分解が生じる。同触媒はベンゼンのシクロヘキサンへの水素化にも用いられた。別の例では、欠陥を有するHKUST-1骨格内に埋め込まれたパラジウムナノ粒子が、調整可能なルイス塩基性サイトをつくる[93] 。したがって、この多機能性Pd/MOF複合体は、段階的なベンジルアルコール酸化とクネーフェナーゲル縮合を行うことができる。
MOFは、その細孔のサイズと形状を調整可能な特性から、光化学反応と重合反応の両方に有用である可能性がある。Liらは3次元MOF{[Co(bpdc)3(bpy)] • 4dmf • H2O} (bpdc: biphenyldicarboxylate, bpy: 4,4′-bipyridine)を合成した[94]。このMOFを用いてo-メチルジベンジルケトン(o-MeDBK)の光化学が詳細に研究された。この分子はシクロペンタノールの生成を含む多様な光化学反応特性を有することが判明した。また、MOFは、その細孔という閉じ込められた空間内での重合反応の研究に用いられてきた。閉じ込められた空間での重合反応は、開放空間での重合とは異なる特性を示す可能性がある。北川らにより、ラジカル重合の活性化モノマー候補として、スチレン、ジビニルベンゼン、置換アセチレン、メタクリル酸メチル、酢酸ビニルが検討されてきた[95][96]。リンカーサイズの違いにより、MOFチャネルサイズは概ね25~100Å2のオーダーで調整可能である。これらのチャネルはラジカル重合サイトとして使用された場合、ラジカルを安定化させ停止反応を抑制することが示された。
ホモキラルMOFを構築するいくつかの戦略が存在する。アキラルなリンカー配位子の自己分解によってホモキラルMOFの結晶を得る方法は、その目標を達成する方法の一つである。しかし、得られたバルク試料には両方の鏡像体が含まれており、ラセミ体となる。青山らは、結晶成長過程における核生成を精密に制御することで、アキラル配位子からバルク状態のホモキラルMOFの取得に成功した[97] 。Zhengらは、結晶のエナンチオマー対形成における統計的揺らぎを化学的に操作することで、アキラル配位子からのホモキラルMOF合成を報告している[98]。キラルな影響下でのMOF結晶成長は、アキラルリンカー配位子を用いてホモキラルMOFを得るための別アプローチである。Rosseinskyらは、結晶成長時のらせん構造のキラル性を制御することでホモキラルMOF形成を誘導するため、キラルな共配位子を導入した[99][100]。Morrisらは、キラルカチオンを含むイオン性液体反応を用いてMOFを合成し、ホモキラルMOFを得た[101]。しかしホモキラルMOF合成において最も直接的かつ合理的な戦略は、入手容易なキラルリンカー配位子を用いた構築法である。
Linらは、MOFの反応後修飾により、触媒として使用可能なエナンチオ選択的ホモキラルMOFを生成できることを示した[103]。得られた3次元ホモキラルMOF{[Cd3(L)3Cl6] • 4DMF • 6MeOH • 3H2O} (L=(R)-6,6'-dichloro-2,2'-dihydroxyl-1,1'-binaphthyl-bipyridine) は、Ti(OiPr)4による前処理でグラフト化Ti-BINOL酸塩種を生成させた場合、ジエチル亜鉛付加反応において均一系の類似物と同等の触媒効率を示すことが確認された。MOFの触媒活性は骨格構造によって異なる。Linらは、同一材料から合成されたMOFであっても、骨格構造によって触媒活性が大きく異なることを発見した[104]。
前駆体触媒を構成要素とするホモキラルMOF
[編集]触媒活性を持つホモキラルMOFを構築する別のアプローチとして、活性触媒または前駆体触媒であるキラル金属錯体を直接骨格構造に組み込む方法がある。例えばHuppらは、キラル配位子とbpdc(ビフェニルジカルボン酸塩)をZn(NO
3)
2と結合させ、2重相互貫通3次元ネットワークを得た[105]。骨格内のキラル配位子の配向により、すべてのマンガン(III)サイトがチャネルを介してアクセス可能となる。得られた開放骨格は、不斉オレフィンエポキシ化反応に対して触媒活性を示した。反応中に触媒活性の顕著な低下は観察されず、触媒は数回にわたりリサイクル・再利用が可能であった。Linらは、ホスホン酸ジルコニウム由来のRu-BINAP系を報告している[106]。Ru(BINAP)(ジアミン)Cl2前駆体を含むホスホン酸ジルコニウム系キラル多孔質ハイブリッド材料は、芳香族ケトンの不斉水素化において優れたエナンチオ選択性(最大99.2% ee)を示した。
一部のMOF材料は、酵素の特徴である孤立した多核サイト、動的なホスト-ゲスト応答、疎水性キャビティ環境を組み合わせることで酵素に似せられる可能性がある[107]。 生物における2つの金属イオンが関与する協調的触媒作用のよく知られた例には、メタンモノオキシゲナーゼの二鉄サイト、シトクロムcオキシダーゼの二銅サイト、および三銅オキシダーゼがある。これらは、MOP-1に見られる二核Cu2パドルホイールユニット[108][109]やHKUST-1における[Cu3(btc)2] や、MIL-88[110]やIRMOP-51[111]に見られるFe
3O(CO
2)
6などの三核単位と類似性を持つ。したがって、MOFは生体模倣的な触媒中心を有している。酵素はタンパク質を「分子認識」する、すなわち特定の基質に対して高い親和性を示す。分子認識効果は、ゼオライトでは自身の硬直な構造のために制限されているようである[112]。これに対し、MOFは、動的特性とゲスト分子の形状応答により、酵素に比較的似ている。実際、多くの骨格は、光や熱などの刺激によって回転可能な有機部分を含む[113]。
MOF構造内の多孔質チャネルは光触媒サイトとして利用可能である。光触媒反応において、単核錯体は通常、単一電子プロセスしか起こさないか、高エネルギー照射を必要とするため用途が制限される。二核系は光触媒の開発において数多くの魅力的な特徴を有する[114]。0次元MOF構造において、ポリカチオン性ノードは半導体量子ドットとして機能し、リンカーが光子アンテナとして働くことで光刺激により活性化される[115]。理論計算によれば、MOFは1.0~5.5電子ボルトのバンドギャップを有する半導体または絶縁体であり、配位子の共役度を変化させることで調整可能である[116]。実験結果からも、IRMOF型サンプルのバンドギャップはリンカーの官能基を変化させることで調整可能であることが示されている[117]。
応用面では、抗炎症治療を目的としたMOFナノザイムが開発された[118]。
産業におけるMOFの実用化には、その機械的特性の徹底的な理解が不可欠である。なぜなら、押出成形やペレット成形といったほとんどの加工技術は、MOFに著しい機械的圧縮応力を加えるからである[119]。多孔質構造の機械的応答は、高圧下で特異的な挙動を示す可能性があるため注目されている。ゼオライト(微細多孔質アルミノケイ酸塩鉱物)はMOFの機械的応答の参考となるが、有機リンカーの存在がゼオライトとは異なる新規な機械的応答をもたらす[120]。MOFの構造は極めて多様なため、その機械的特性を全て分類することは困難である。さらに、MOFのバッチ間ばらつきや極端な実験条件(ダイヤモンドアンビルセル)により、荷重に対する機械的応答の実験的決定は限定的である。しかしながら、構造と特性の関係を決定するための多くの計算モデルが構築されている。これまでに調べられたMOF系には、ゼオライト型イミダゾレート骨格(英語版)(ZIF)、カルボキシレート系MOF、ジルコニウム系MOFなどがある[120]。
一般的に、MOFは圧縮荷重下で3つの過程を経る: アモルファス化、ハイパーフィリング、圧力誘起相転移である。
- アモルファス化(amorphization):リンカーが座屈し、MOF内部の多孔性が急激に低下する。
- ハイパーフィリング(hyperfilling):液体(通常は溶媒)中で静水圧圧縮されるMOFは、細孔が荷重液体によって充填され、収縮ではなく膨張する。
- 圧力誘起相転移(pressure induced phase transition):負荷中に結晶構造が変化する。
MOFの応答は主にリンカーと無機ノードの種類に依存する。ただし、特定のMOFはゲストに依存する結晶多形を示し、ゲスト分子が異なると結晶相や構造も異なるものに誘導される[121] 。この現象により、周囲の気体環境の組成に応じて変化するMOF結晶構造の例がある。
ゼオライト型イミダゾレート骨格(Zeolitic imidazolate frameworks, ZIFs)
[編集]ゼオライト型イミダゾレート骨格(英語版)(ZIF)では、いくつかの異なる機械的性質が報告されている。ZIFはゼオライトと多くの類似点を持つため、金属有機構造体(MOF)の中でも機械的特性に関して最も広く研究されている[120]。ZIFファミリーにおける一般的な傾向として、アクセス可能な細孔体積が増加するにつれて、ヤング率と硬度の低下が認められる[122]。ZIF-62シリーズのバルク弾性率は、ベンゾイミダゾレート(bim−)濃度の増加に伴い上昇する。ZIF-62は、bim−濃度が式量単位あたり0.35を超えると、開放細孔(open pore, op)相から閉鎖細孔(close pore, cp)相への連続的な相転移を示す。ZIF-62-bim0.35のアクセス可能な細孔サイズと体積は、適切な圧力を加えることで精密に制御可能である[123]。
別の研究では、溶媒中での静水圧負荷下において、ZIF-8材料は収縮ではなく膨張することが示されている。これは内部細孔が溶媒でハイパーフィリングされた結果である[124]。理論計算によれば、ZIF-4およびZIF-8材料は静水圧負荷下でせん断軟化メカニズムを示し、材料がアモルファス化(約0.34ギガパスカル)する一方で、依然として6.5ギガパスカルオーダーのバルク弾性率を保つことが示された[125][126]。さらに、ZIF-4およびZIF-8 MOFは多くの圧力依存性相転移を起こす[122][127]。
カルボキシレート系MOF(Carboxylate-based MOFs)
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カルボキシレート系MOFは多様な形態をとり、広く研究されてきた。カルボキシレート系MOFの代表例としてHKUST-1、MOF-5、およびMILシリーズについて説明する。
HKUST-1(英語版)は二量体の銅パドルホイール構造を有し、2種類の細孔を持つ。錠剤成形ではHKUST-1のようなMOFは細孔崩壊を起こす[128]。カルボキシレート系MOFは負の熱膨張(加熱すると密度が増す)を示すが、予想外なことに、硬度とヤング率はリンカーの無秩序化により温度上昇に伴って低下することが判明した[129]。さらに計算上、よりメソポーラスな構造ほど体積弾性率が低いことが判明した。しかし、総細孔容積が同等であっても、多数の微細なメソ細孔を有する系よりも少数の巨大なメソ細孔を有する系で体積弾性率の上昇が観測された[130]。HKUST-1は、静水圧負荷下においてZIF構造と同様の「ハイパーフィリング」現象を示す[131]。
MIL-53(英語版) MOFは「ワインラック構造」を有する。これらのMOFは、ローディング時の柔軟性に起因するヤング率の異方性、およびローディング時のワインラック構造の開口に起因する一方向圧縮に対する負の線圧縮率の可能性について研究されている[135][136]。
ジルコニウム系MOF(Zirconium-based MOFs)
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ジルコニウム系MOF(UiO-66など)は、非常に頑強なMOFの一種である(強固な六核Zr6金属ノードに起因)。熱、溶媒、その他の過酷な条件に対する耐性が向上しており、機械的特性において注目されている[137]。せん断弾性率測定と錠剤成形試験により、UiO-66 MOFはZIFやカルボキシレート系MOFと比較して機械的強靭性が極めて高く、細孔崩壊に対する耐性が大きいことが示されている[128][138]。ただし、錠剤成形下では高い安定性が見られるものの、ボールミル処理条件下ではリンカーが配位する無機ノードが破壊されることにより、UiO-66 MOFは比較的速やかに非晶質化することが確認された[139]。
水素分子はあらゆる燃料の中で最も高い比エネルギーを有する。しかしながら、水素ガスを圧縮しない限り、その体積あたりエネルギー密度は極めて低いため、水素の輸送と貯蔵には圧縮および液化プロセスが必要となる[140][141][142]。したがって、それらプロセスに必要な圧力を低減する新たな水素貯蔵法の開発が、活発な研究分野となっている[140]。MOFは、高い比表面積と体積比、ならびに化学的に調整可能な構造を有することから、吸着型水素貯蔵材料として注目されている[58]。
何も入っていないガスシリンダーと比較して、MOFを充填したガスシリンダーは、水素分子がMOF表面に吸着するため、一定の圧力下でより多くの水素を貯蔵できる。さらに、MOFにはデッドボリュームが存在しないため、水素分子がアクセスできない体積が空間を占有することによる貯蔵容量の損失がほとんど生じない。また、水素吸着が主に物理吸着に基づくため、多くのMOFは完全可逆的な吸着・脱離挙動を示す。吸着された水素を解放する際、大きな活性化エネルギーを必要としない。MOFの貯蔵容量は、水素が気体状態にある場合にのみMOFの利点が発揮されるから、水素の液相密度に制限を受ける[21]。
MOF表面への吸着能は、ガスの温度と圧力に依存する。一般に、吸着量は温度の低下と圧力の増加に伴い増加する(通常20~30バールで最大値に達した後に減少していく)[21][58][142] 。ただし、自動車用燃料電池において水素貯蔵に用いるMOFは、常温および1~100バールの圧力範囲で効率的に動作する必要がある。これは自動車用途において安全とみなされる値の範囲である[58]。

米国エネルギー省は、軽量自動車用燃料電池の車載水素貯蔵システムに関する年間技術目標リストを公表しており、これは当該分野の研究者を導くものである[143]。目標達成に向け、MOFなどの高多孔性・高表面積材料が設計・合成されている。これらの吸着材料は、水素分子の大きなHOMO-LUMOギャップと低いHOMOエネルギー準位のため、化学吸着ではなく物理吸着が機能する。この目的におけるベンチマーク材料はMOF-177であり、77 K (−196.2 °C)・70バール (7,000 kPa)条件下で7.5 wt%の水素を蓄積し、体積容量は32 g L−1と報告されている[144]。MOF-177は、1,3,5-ベンゼントリベンゾエート有機リンカーで架橋された[Zn4O]6+クラスターで構成され、測定されたBET表面積は4630 m2 g−1である。もう一つの代表的な材料はPCN-61であり、77 K (−196.2 °C)・35バール (3,500 kPa)で6.24 wt %および42.5 g L−1、大気圧で2.25 wt %の水素吸着を示す[145]。PCN-61は、[Cu2]4+パドルホイールユニットが5,5′,5″-ベンゼン-1,3,5-トリイルトリス(1-エチニル-2-イソフタレート)有機リンカーを介して連結された構造を有し、測定されたBET比表面積は3000 m2 g−1である。こうした有望なMOF例があるものの、実用的な水素貯蔵において最高の性能を発揮する人工多孔質材料の種類は、活性炭と共有結合性有機骨格(COF)である[146]。
水素貯蔵におけるMOFの実用化にはいくつかの課題がある。室温付近での水素吸着には、水素結合エネルギーを大幅に高める必要がある[58]。これまでにカルボキシレート系MOF、複素環アゾレート系MOF、金属シアニド系MOF、共有結合性有機骨格など、複数の種類のMOFが研究されてきた。カルボキシレート系MOFはこれまで最も注目されてきた。その理由は以下である。
- それらは市販されているか、容易に合成可能である。
- 高い酸性度(pKa ≈ 4)を有し、in situでの脱プロトン化を容易にする。
- 金属-カルボキシレート結合の形成は可逆的であり、秩序ある結晶性MOFの形成を促進する。
- さらに、カルボキシレート基の架橋二座配位能力は、孔から溶媒を除去するために求められる条件下でMOF構造を維持するために不可欠な、高い骨格連結性と強固な金属-配位子結合を可能にする[58]。
カルボキシレート系骨格に最も一般的に用いられる遷移金属はCu2+およびZn2+である。より軽い典型元素も研究されている。Be12(OH)12(btb)4は、軽金属から構成されるMOFとして初めて合成・構造解析に成功した物質であり、高い水素貯蔵能力を示すが、毒性が強すぎるため実用向きではない[147]。Mg4(bdc)3など、他の軽金属を用いたMOFの開発に多大な努力が注がれている[58]。
室温におけるMOFの水素貯蔵は、「貯蔵容量の最大化」と「適切な脱離速度の維持」との間でバランスを取る戦いであり、同時に、吸着剤の骨格構造を長いサイクルにわたって維持することが求められる。水素貯蔵用MOFの設計を規定する主な戦略は二つある:
- 1) 材料の理論的な貯蔵容量を増加させること、
- 2) 作動条件を周囲温度・圧力に近づけること。
RowsellとYaghiは初期の論文において、これらの目的達成に向けた複数の指針を提示している[148][149]。
水素貯蔵に用いられるMOF材料の一般的な傾向として、表面積が大きいほどMOFが貯蔵できる水素量も増加する。高表面積材料は高い微細孔体積と低いバルク密度を示す傾向があり、これにより多量の水素吸着が可能となる[58]。
水素吸着エンタルピーが高いことも重要である。理論研究によれば、22~25 kJ/molが常温での水素貯蔵に理想的である。これはH2を吸着するのに十分な強度を持ちながら、速やかな脱着を可能にするほど弱いからである[150]。水素と電荷を持たない有機リンカー間の相互作用はこれほど強くないため、水素が5~10 kJ/molのエンタルピーで吸着するMOFの合成に多大な労力が費やされてきた。合成上、これは金属が完全に配位されるのを防ぐ幾何学的構造を持つ配位子を使用すること、合成過程で揮発性の金属結合溶媒分子を除去すること、および合成後に追加の金属カチオンを添加することによって達成できる[30]。
(C
5H
5)V(CO)
3(H
2)とMo(CO)
5(H
2)は、オープンな金属配位サイトが結合エネルギーを高める良い例である[151]。しかしながら、それらの高い金属-水素結合解離エネルギーは、水素を充填する際に膨大な熱を放出することになり、燃料電池には好ましくない[58]。したがって、このような強固な金属-水素結合をもたらす軌道間相互作用は避け、単純な電荷誘起双極子相互作用を採用すべきである。Mn3[(Mn4Cl)3(btt)8]2はその一例である。
電荷誘起双極子相互作用の典型的な結合エネルギーは22~25 kJ/molであるため、電荷を持ったリンカーや金属イオンの使用が期待されている[58] 。金属-水素結合の強度はMOFにおいて低下しており、おそらく電荷拡散が原因である。この結合の相互作用をさらに強化するために2価および3価の金属イオンが研究されている。この手法の問題点は、金属表面が露出しているMOFはリンカーの濃度低下が生じることである。これにより骨格崩壊が起こりやすくなり、合成が困難となる。また、MOFの有用な寿命も短くなる可能性がある[58]。
MOFは空気中の水分にセンシティブであることが多い。特にIRMOF-1は室温で微量の水分存在下でも分解する。金属類似体に関する研究により、亜鉛以外の金属が高温下でより高い湿度にも耐えられる能力があると解明されている[152][153]。
空気接触対策として、特別に設計された貯蔵容器が必要となり、コストがかかる場合がある。金属-イミダゾレート、金属-トリアゾレート、金属-ピラゾレート骨格などにおける強固な金属-配位子結合は、MOFの空気に対する感受性を低下させることが知られており、これにより貯蔵コストを削減できる[154]。
物理吸着と弱いファンデルワールス力が吸着を支配する微細多孔質材料において、貯蔵密度は細孔のサイズに大きく依存する。グラファイト炭素やカーボンナノチューブなどの理想的均質材料の計算によれば、7 Å幅の細孔を持つ微細多孔質材料は室温で最大の水素吸着量を示すと予測される。この幅では、水素分子が対向する表面に正確に2層吸着し、間に隙間が全く生じない[58][155]。10 Å幅の細孔も理想的なサイズである。この幅では水素分子が3層分、隙間なく存在できるからである[58]。(水素分子の結合長は0.74 Å、各原子のファンデルワールス半径は1.17 Åであるため、その有効ファンデルワールス長は3.08 Åとなる[156]。)
構造欠陥もMOFの性能において重要な役割を果たす。架橋スピルオーバー(英語版)を介した室温水素吸着は主に構造欠陥によって支配される。構造欠陥には2つの影響がある。
- 1) 部分的に崩壊した骨格が細孔へのアクセスを遮断し、それによって水素吸着を減少させる
- 2) 格子欠陥が新たな細孔とチャネルの複雑な網状構造を形成し、水素吸着を増加させる[157]。
構造欠陥はまた、金属を含むノードの不完全配位を引き起こす。これによりアクセス可能な金属中心の数は増加し、水素貯蔵用MOFの性能は向上する[158]。さらに、構造欠陥はフォノンの輸送に影響を与え、MOFの熱伝導率に影響を及ぼす[159]。
吸着とは、表面に衝突する原子や分子を捕捉するプロセスである。したがって、物質の吸着容量はその表面積に比例して増加する。3次元空間において、原子や分子が内部表面に到達できる高多孔性構造が最大表面積を得る。この単純で定性的な議論から、高多孔性の金属有機構造体(MOF)は水素貯蔵装置の優れた候補となることが示唆される。
吸着は大きく分けて2種類に分類される:物理吸着と化学吸着である。物理吸着は弱いファンデルワールス力によって特徴づけられ、結合エンタルピーは通常20 kJ/mol未満である。一方、化学吸着はより強力な共有結合やイオン結合によって特徴づけられ、結合エンタルピーは250~500 kJ/molの範囲にある。いずれの場合も、吸着体原子または分子(すなわち表面に付着した粒子)は、表面の未占有結合位置に起因する表面エネルギーによって吸着剤(固体)に引き寄せられる。その後、軌道の重なりの程度によって、相互作用が物理吸着となるか化学吸着となるかが決定される[160]。
MOFにおける水素分子の吸着は物理吸着である。水素分子は電子を2つしか持たないため、力は弱く、典型的には4~7 kJ/molであり、298 K未満の温度での吸着にかろうじて十分である[58]。
MOFにおけるH2吸着メカニズムの完全な解明は、広範な圧力と温度を探索する大正準集団における統計的平均化によって行われた[161][162]。
水素貯蔵材料としてのMOFの特性評価には、2つの水素吸着測定法が用いられる:重量法(英語版)(Gravimetric method)と体積法(Volumetric method)である。MOF中の水素総量を算出するには、表面に吸着した水素量と細孔内に存在する水素量の双方を考慮する必要がある。絶対吸着量(Nabs)を算出するには、表面過剰量(Nex)に水素のバルク密度(ρbulk) とMOFの細孔体積(Vpore)の積を足し合わせる。その式は次の通りである[163]:
貯蔵された水素によるMOFの質量増加は、高感度な微量天秤(英語版)によって直接測定される[163]。系に十分な高圧が加えられているとき、周囲ガスの密度が大きくなり浮力が増すため、検出される吸着水素の重量は見かけ上減少する。したがって、この「重量ロス」はMOF骨格の体積と水素密度を用いて補正する必要がある[164]。
MOFに貯蔵される水素量の変化は、一定体積下での水素圧力の変動を検出することで測定される[163]。供給された水素の総体積から自由空間における水素体積を差し引くことで、MOFに吸着された水素の体積が算出される[165]。
水素の高体積密度・高重量密度での可逆的貯蔵に利用可能な方法が以下の表にまとめられている。ここでρmは重量密度、ρvは体積密度、Tは作動温度、Pは作動圧力である[166]。
| 貯蔵方法 | ρm (質量%) | ρv (kg H2/m3) | T (℃) | P (bar) | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 高圧縮ガスシリンダー | 13 | <40 | 25 | 800 | 軽量複合材シリンダー中に圧縮H2ガスを封入する。 |
| 極低温タンク | サイズに依存 | 70.8 | −252 | 1 | 液体H2として貯蔵。25 ℃において1日あたり数パーセントのH2が継続的に失われる。 |
| 吸着水素 | ~2 | 20 | −80 | 100 | 物質へのH2の物理吸着。 |
| ホスト金属の格子間サイトに吸着 | ~2 | 150 | 25 | 1 | 原子状の水素はホスト金属に可逆的に吸着する。 |
| 錯体化合物 | <18 | 150 | >100 | 1 | 錯体化合物 [AlH4]−または[BH4]−として貯蔵。高温下で脱離、高圧下で吸着。 |
| 金属および錯体と水 | <40 | >150 | 25 | 1 | 水によって金属を化学的酸化させ、H2を放出する |
これらの中で、高圧ガスシリンダーは水素ガスを貯蔵するために極高圧が必要なため、極低温タンクは液体水素を貯蔵するために極低温が必要なため、燃料としての水素貯蔵方法としては最も非現実的である。他の方法はいずれも広く研究・開発が進められている[166]。
MOFの高表面積と原子レベルの金属サイト特性は、特にエネルギー関連分野において電極触媒(英語版)として適した候補となる。これまでMOFは、水の電気分解(英語版)(水素発生反応および酸素発生反応)、二酸化炭素還元、酸素還元反応の電極触媒として広く利用されてきた[167]。現在、主に2つのアプローチが存在する:
しかしながら、一部のMOFは電気化学環境下で不安定であることがわかっている[171] 。電極触媒反応中のMOFの電気化学的変換により実際の触媒物質が生成される場合があり、そのような条件下ではMOFは前駆体触媒として機能する[172]。したがって、MOFを電極触媒と主張するには、電極触媒反応と連動したin situ 解析技術が必要である。

MOFの潜在的な応用分野として、光ルミネッセンスによる生物学的イメージングおよびセンシングが挙げられる。ルミネッセンスMOFの大部分は金属クラスターにランタノイド元素を用いている。ランタノイドのフォトルミネッセンス(英語版)は、可視光線および近赤外線領域において特徴的な鋭さを持つ重なり合わない発光バンド、光退色(photobleaching)や点滅現象(blinking)への耐性、長い発光寿命など、イメージング用途に理想的な多くの特異的性質を有する[173]。しかしながら、ランタノイド発光はラポルテ禁制のf-f遷移を経る必要があるため、直接感光化することは困難である。ランタノイド発光の間接感光化は「アンテナ効果」を利用することで達成可能であり、有機リンカーがアンテナとして機能し励起エネルギーを吸収、そのエネルギーをランタノイドの励起状態へ移し、緩和時にランタノイド発光を生じさせる[174]。アンテナ効果の代表的な例として、3価ランタノイドイオンと1,3,5-ベンゼントリカルボン酸(btc)リンカーを組み合わせ、3次元格子に配位された無限ロッド状二次構築単位を形成するMOF-76が挙げられる[175]。複数の研究グループが実証したように、BTCリンカーはランタノイド発光を効果的に増感し、ランタノイドの種類に応じて可変の発光波長を持つMOFを生成する[176][177] 。さらにYanのグループは、Eu3+-MOF-76およびTb3+-MOF-76が、揮発性単環芳香族炭化水素からアセトフェノンを選択的に検出できることを示した。アセトフェノンを取り込むと、MOFの発光強度は急激な減少(消光)を示す[178]。
生物学的イメージングへの応用においては、以下の2つの主要な課題を克服する必要がある:
- 標的分子の正常な相互作用や挙動に影響を与えないよう、ナノスケールでMOFを合成すること
- 吸収波長と発光波長は、サンプルの自家蛍光や他の吸収物質との重なりが最小限で、かつ組織透過性が最大となる領域であること[179][180]
2つ目の課題について、リンカーを小型化するとMOFの安定性は向上するが、紫外線や高エネルギー側の可視光線領域での吸光が増加する。吸収特性を赤方偏移させるには多環芳香族のような大型の発色性リンカーを用いればよいが、安定性は低下する。大型リンカーを使わずに、MOFの吸収波長を赤方偏移させ低エネルギー励起源を使用可能とする別手法が求められる。合成後修飾(PSM)は有望な戦略の一つである。Luoらは官能化された有機リンカーを有する新たなランタノイド系MOFファミリーを報告した。MOF-1114、MOF-1115、MOF-1130、MOF-1131と命名されたこれらのMOFは、アミノ基で官能化されたジカルボキシレートリンカーで架橋された八面体サブユニットから構成される。リンカー上のアミノ基は、サリチルアルデヒドまたは3-ヒドロキシナフタレン-2-カルボキシアルデヒドとの共有結合性の合成後修飾反応サイトとして機能した。いずれの反応もリンカーのπ共役を拡張し、吸収波長を450 nmから650 nmへ赤方偏移させた。著者らはこの手法が類似のMOF系へ応用可能であり、リンカー長増加による細孔体積拡大により、より大きなπ共役反応物を用いて吸収波長をさらに赤方偏移させられると提案している[181] 。 MOFを用いた生体イメージングは複数の研究グループ(特にFoucault-Colletら)によって実現されている。2013年、彼らはフェニレンビニレンジカルボキシレート(PVDC)リンカーを用いた近赤外(NIR)発光性Yb3+-NMOFを合成した。彼らは共焦点顕微鏡、可視分光法、近赤外分光法を用いてHeLa細胞およびNIH-3T3細胞における細胞内取り込みを観察した[182] 。水およびHepes緩衝液中では量子収率が低いものの、発光強度は可視領域と近赤外領域の両方で細胞内取り込みを画像化するのに十分な強度を維持している。

放射能汚染に対する公衆の認識と懸念が高まる中、原子力発電所の運転や核兵器の廃棄処理によって主に発生している核廃棄物の回収、封じ込め、処分に向けた新たな手法の開発に関心が集まっている。核廃棄物分野で現在認識されている最大の課題の一つは、アクチノイド元素の長期封じ込めと選択的回収が可能な新規材料の開発と合成である。この応用に向けて、金属有機構造体(MOF)が有望な材料として台頭している。その顕著なモジュール性、高い比表面積、選択的結合親和性、カスタマイズ可能なトポロジーや結晶性は、調整可能なオンデマンド特性と高い構造安定性を備えた材料を実現する。例えば、MOFは結晶性を示すことから、高い構造安定性を有する傾向がある。これは核廃棄物処理に応用されており、特にジルコニウム系構造体が、アメリシウム241などの高放射性物質から放出されるガンマ線への長期曝露に耐えつつ結晶性を保つことが実証されている。MOFを用いて放射性核種を分離する手法は複数存在する。最も主な手法は、放射性核種をMOFの金属ノードとして組み込む方法である。これによりアクチノイドを剛性結晶構造そのものに組み込み、固定化することで効果的に捕捉する。アクチノイドを金属ノードとして組み込む手法には、合成、金属ノード拡大、陽イオン交換など多様な方法が存在する。アクチノイド含有MOFはアクチノイド塩から直接合成可能であり、追加的または事前的な修飾を必要とせずに直接組み込みが実現できる[56][183]。さらに、金属ノードを拡大することでアクチノイドと遷移金属を同時にノードとして機能させる組み合わせが可能となり、陽イオン交換を通じてアクチノイドを金属ノードに組み込むことができる。事前に合成されたMOFをアクチノイド陽イオンに曝露すると、放射性核種が遷移金属に取って代わり、金属ノードとして結晶自体に組み込まれるようになる[56]。
金属有機構造体(MOF)が放射性核種を回収する別の方法は、これらの陽イオンを官能基化された有機リンカーに結合または固定化させることである。これらの有機リンカーは、陽イオンに結合・固定化することが知られている求核性官能基を一般的に利用する。そのような官能基にはカルボン酸基やクラウンエーテルがある。この結合・固定化により、MOFからのアクチノイドの溶出速度が大幅に遅くなる。例えば、カルボン酸官能基を有するリンカーを用いることで、ジルコニウム系フレームワークからのアメリシウム241のジメチルホルムアミドへの溶出を大幅に遅延させることに成功している[184][185][186][187][188]。
金属有機構造体による放射性核種の回収に関する別の手法は、ゲスト分子の組み込みによるものである。この手法では、まずアクチノイド陽イオンを結晶細孔に導入し、その後追加リンカーまたはキャップリンカーを設けることで、放射性核種を結晶細孔内に封じ込める。中核となる概念は、追加のリンカーがアクチノイド陽イオンを阻害し、結晶構造からの溶出プロセスを遅延させる点にある。このMOFからの溶出量は、ペロブスカイト、ゼオライト、リン酸塩セラミックスなど、放射性核種封じ込めに用いられる他の材料と同程度のオーダーであることが報告されている[189][190][191][56]。
低毒性で生体適合性のあるMOFの合成、特性評価、および薬剤関連研究により、医療応用への可能性が示されている。多くの研究グループが多様な低毒性MOFを合成し、医療応用に向けた各種治療薬の担持・放出における利用可能性を研究している。薬剤放出を誘導する手法としては、pH応答性、磁気応答性、イオン応答性、温度応答性、圧力応答性など多様な方法が存在する[192]。
2010年、Smaldoneらは、安価な天然食用物から生体適合性MOFであるCD-MOF-1を合成した。CD-MOF-1は、カリウムイオンによって結合された6つのγ-シクロデキストリン環からなる基本単位が繰り返し配列した構造を有する。γ-シクロデキストリン(γ-CD)は、デンプンから酵素的に大量生産される対称的な構造を持つ環状オリゴ糖であり、8つの非対称なα-1,4結合D-グルコピラノシル残基から構成される[193]。これらのグルコース誘導体の分子構造は、切頭円錐、バケツ、またはトーラスに近似し、親水性の外表面と非極性の内部空洞を形成する。シクロデキストリンは適切なサイズの薬物分子と相互作用し、包接複合体を形成する[194]。
Smaldoneの研究グループは天然物からCD-MOF-1を安価かつ簡便に合成する方法を提案した。彼らは糖(γ-シクロデキストリン)とアルカリ塩(水酸化カリウム、塩化カリウム、安息香酸カリウム)を蒸留水に溶解し、アルコール度数95パーセントの穀物アルコール(エバークリア(英語版))を1週間かけて溶液中に蒸気拡散させた。この合成により、約1ナノメートルの細孔径を持つ立方晶系(γ-CD)6繰り返し構造が得られた。その後2017年、ノースウェスタン大学のHartliebらはCD-MOF-1を用いたイブプロフェンの封入に関する追加研究を行なった。イブプロフェンをMOFに封入する様々な手法を検証するとともに、イブプロフェン封入MOFの生物学的利用能に関する関連研究を行った。彼らはCD-MOF-1へのイブプロフェン封入法として2つの異なる手法を検討した:
- MOF生成時のアルカリ陽イオンソースとしてイブプロフェンカリウム塩を用いた結晶化
- 遊離酸イブプロフェンのMOFへの吸着・脱プロトン化
である。その後、研究グループは、イブプロフェンおよびその他の非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の実用的な送達方法としてのCD-MOF-1の適用性を判断するために、in vitroおよびin vivo試験を実施した。in vitro試験では、100 μMまでの濃度で毒性や細胞生存率への影響は認められなかった。マウスを用いたin vivo試験では、イブプロフェンカリウム塩対照サンプルと同等の迅速なイブプロフェン取り込みが確認され、血漿中濃度のピークは20分以内に観察された。さらに、この共結晶は血漿サンプル中での半減期が2倍となる利点も有している[195]。半減期の増加は、CD-MOF-1が純粋な塩形態と比べてイブプロフェンの溶解性を高めたことに起因する。
これらの研究成果を受けて、多くの研究グループが市販薬を用いた水溶性生体適合性MOFによるドラッグデリバリーに関するさらなる研究を進めてきた[196]。2018年3月、Sara RojasらはCD-MOF-1以外の様々な生体適合性MOFを用いた薬物封入・送達に関する研究を報告した。研究グループは、3種類の生体適合性MOF(MIL-100(Fe)、UiO-66(Zr)、MIL-127(Fe))におけるイブプロフェン(疎水性)とアスピリン(親水性)の負荷・放出特性を調査した。模擬皮膚条件(37℃の水系媒体)下において、薬剤を封入した6種類のMOFは1~7日間の放出持続性といった局所ドラッグデリバリー(英語版)システムとしての要件を満たし、薬剤を望ましくない副作用を引き起こすことなく送達することが確認された[197]。
研究グループは、薬剤の取り込みが「薬物とマトリックス間の親水性/疎水性バランス」および「骨格構造を通じた薬剤のアクセサビリティ」によって支配されることを発見した。皮膚条件下での制御放出は、以下の要因に応じて異なる動態プロファイルを示す:
- (i) 骨格構造:オープンな構造のMIL-100では放出が速く、閉じた1次元細孔系MIL-127では放出が遅い。
- (ii) 薬物の疎水性/親水性特性:UiO-66マトリックスではアスピリン放出は速く、イブプロフェン放出は遅い。
さらに、単純なボールミル法を用いて、モデル薬剤である5-フルオロウラシル、カフェイン、パラアミノ安息香酸、ベンゾカインを効率的に封入した。計算機シミュレーションと実験の両方により、[Zn4O(dmcapz)3]が生物活性分子の多量封入に適していることが確認された[198]。
MOFをドラッグデリバリーシステムとして用いた最近の研究は、イブプロフェンやアスピリンといった日常的な薬剤の封入だけにとどまらない。2018年初頭、Chenらは抗腫瘍研究におけるZIF-8の応用について発表した。その目的はオートファジー阻害薬剤である3-メチルアデニン(3-MA)の放出をコントロールし、標的に到達する前に失われるのを防ぐことである[199]。同グループは、3-MA@ZIF-8ナノ粒子処理を行ったHeLa細胞のオートファジー関連タンパク質とオートファジーフラックスは、オートファゴソーム形成が著しく阻害されることを示し、pH感受性解離が同等濃度の3-MAにおけるオートファジー阻害効率を高めることを明らかにしたと結論付けた。これは、癌治療におけるドラッグデリバリー手法としてのMOFの将来的な研究と応用可能性を示唆している。
2014年、研究者らは電気伝導性を持つMOF薄膜Cu3(btc)2(別名HKUST-1(英語版))に分子7,7,8,8-テトラシアノキノドジメタンを浸透させた導電性薄膜を作製できることを実証した。この薄膜は太陽光発電、センサー、電子材料などの応用が可能であり、半導体作製への道筋を示すものである。研究チームは、空気中で電気伝導度が安定かつ調整可能であることを示し、その値は最大で7ジーメンス毎メートル(S/m)に達し、青銅に匹敵する値を示した[200]。
Ni3(2,3,6,7,10,11-ヘキサイミノトリフェニレン)2は、バンドギャップを持つ半導体であり、自己組織化が可能な金属有機グラフェン類似体である。これは導電性MOF(英語版)の一例であり、類似化合物群を代表するものである。2,3,6,7,10,11-ヘキサイミノトリフェニレン(HITP)の対称性と幾何学的構造により、有機金属錯体全体はフラクタルに近い性質を持ち、完全な自己組織化を可能とする。対照的に、グラフェンは半導体特性を得るためにドーピングが必要である。Ni3(hitp)2ペレットは2 S/cmの導電性を示す[201]。
2018年、研究者らは2次元半導体MOFFe3(THT)2(NH4)3を合成し、室温で高い電気移動度を示した[202]。2020年には、この材料が光検出デバイスに組み込まれ、紫外から近赤外(400–1575ナノメートル)までの広い波長域を検出することに成功した[203] 。これにより、2次元半導体MOFが光電子デバイスへの応用が可能であることが初めて実証された[204]。
Cu
3(HHTP)
2は2次元金属有機構造体であり、本質的に導電性、多孔性、結晶性を併せ持つ材料は限られている。層状2次元MOFは電気伝導性を示す多孔性結晶構造を有する。これらの材料は三角形リンカー分子(フェニレンまたはトリフェニレン)と、-OH、-NH2、-SHといった官能基から構成される。三角形リンカー分子とCu2+
、Ni2+
、Co2+
、Pt2+
などの正方形平面配位金属イオンは、大規模なグラフェンのように見える六角形構造の層を形成する。これらの層の積層により2次元細孔系を構築できる。グラフェン様2次元MOFは良好な導電性を示している。この特性から、水からの水素発生反応、酸素還元反応、スーパーキャパシタ、揮発性有機化合物のセンシング用の電極材料への応用が期待されている。これらのMOFの中でもCu
3(HHTP)
2は最も低い導電性を示す一方、揮発性有機化合物のセンシングにおいて最も強い応答性を示した[205][206][207]。
生体分子はMOFの結晶化プロセス中に組み込むことが可能である。タンパク質、DNA、抗体などの生体分子をZIF-8内に封入できる。この方法で封入された酵素は、過酷な条件(例:反応性の高い溶媒や高温)に曝露された後も安定かつ活性であった。バイオミメティック鉱化プロセスには、ZIF-8、MIL-88A、HKUST-1、およびランタノイド金属を含む複数の発光性MOFが用いられた[208]。さらに、単一細胞ナノカプセル化(SCNE)(英語版)により、個々の生体細胞をMOFシェル内に封入した[209]。
MOFの微小で調整可能な細孔サイズと高い空隙率は、CO2を回収する吸着剤として有望である[210]。MOFは、石炭火力発電所からのCO2回収において、従来のアミン溶媒ベースの方法に比べ、より効率的な選択肢となり得る[211]。
MOFは石炭火力発電所の主要な3つの炭素回収方式(燃焼前(pre-combustion)回収、燃焼後(post-combustion)回収、酸素燃焼(oxy-combustion))のいずれにも応用可能である[212]。既存プラントへの後付けが可能なのは燃焼後回収方式のみであり、最も関心と研究を集めている。排ガスは充填層反応器(packed-bed reactor)内のMOFを通過させる。排ガスの温度は通常40~60 ℃、CO2分圧は0.13~0.16バールである。CO2は(ファンデルワールス力による)物理吸着または(共有結合形成による)化学吸着のいずれかの方法でMOF表面に結合する[213]。
MOFが飽和状態になると、温度スイング法または圧力スイング法によってCO2がMOFから除去される。このプロセスは再生(regeneration)と呼ばれる。温度スイング法では、高温でCO2が脱着する。アミン法と同等の作動容量を得るには、MOFを約200 ℃まで加熱する必要がある。圧力スイング法では、CO2が脱着するまで圧力を低下させる[214]。
もう1つの注目すべきMOF特性は、その低い比熱である。主流の回収溶媒であるモノエタノールアミン(MEA)溶液は、主成分が水であるため比熱が3~4 J/(g⋅K)である。この高い比熱は、溶媒再生工程、すなわちMEA溶液から吸着されたCO2を除去する工程において、エネルギーロスの一因となる。CO2回収用に設計されたMOFであるMOF-177は、常温で0.5 J/(g⋅K)の比熱を有する[212]。
MOFは真空圧力スイング法を用いるとCO2の90%を吸着する。MOF Mg(dobdc)のCO2吸収容量は21.7 wt%である。大規模発電所に適用した場合、エネルギーコストは65%増加するが、アメリカ国立エネルギー技術研究所(英語版)基準のアミン系システムでは81%の増加となる(目標は35%)。Mg(dobdc)のCO2回収コストは57ドル/トンとなる一方、アミン系システムのコストは72ドル/トンと推定される。このレートでは、580メガワットの発電所における本プロジェクト実施に必要な資本金は3億5400万ドルとなる[215]。
プロピレンオキシドを充填したMOFは触媒として機能し、CO2を環状炭酸塩(多様な用途を持つ環状分子)に変換できる。またバイオガスから炭素を除去することも可能である。MOFが曝露されるガスは高温・高湿度・酸性であるため、化学的安定性を持つランタノイド系MOFが基本的に用いられる[216]。トリアミノグアニジニウム系POFおよびZn/POFは、環境修復(英語版)と生体医療用途に向けた新たな多機能材料である[217]。
MOFメンブレンは、その微小な繰り返し構造により、優れたイオン選択性を発揮できる[218]。これは、海水淡水化や水処理への応用可能性をもたらす。2020年時点で、逆浸透膜法は世界の海水淡水化能力の3分の2以上を占め、ほとんどの浄水処理プロセスの最終段階を担っている[219]。浸透膜はイオンの脱水反応や生物学的チャネルにおける選択的イオン輸送を用いておらず、エネルギー効率も良くない。鉱業では、水質汚染の低減や金属回収のためにメンブレンベースのプロセスが用いられている。MOFは海水や廃水からリチウムなどの金属を抽出するために活用できる可能性がある[220]。
ZIF-8やUiO-66などのMOFメンブレンは、オングストロームスケール(10-10 m)の窓とナノメートルスケール(10-9 m)の空洞からなる均一なサブナノメートル細孔を有し、アルカリ金属イオンの超高速選択的輸送を示す。窓はアルカリ金属イオンに対するイオン選択性フィルターとして機能し、空洞は輸送用の細孔として作用する。ZIF-8およびUiO-66メンブレンはそれぞれ約4.6および約1.8のLiCl/RbCl選択性を示し、従来のメンブレンの0.6~0.8という選択性を大幅に上回った[221]。
2020年の研究では、PSP-MIL-53と呼ばれる新たなMOFが太陽光と組み合わせることで、わずか30分で水を浄化できる可能性が示唆された[222]
MOFは空気中の水蒸気を捕捉することが示されている[227]。2021年には湿潤条件下で、ポリマー-MOFが追加のエネルギーなしで毎日1kgあたり17リットルの水を生成可能であると報告された。ただしポリマーMOF 1kgを収めるには多くのスペースが必要となる[228][229]。
MOFはまた、空間冷却におけるエネルギー効率の向上にも活用できる可能性がある[230][231]。

外気を冷却する際、冷却装置は空気の顕熱と潜熱の両方を処理しなければならない。一般的な蒸気圧縮空調装置は、吸気口から入ってくる湿った空気の露点温度以下に冷やされたフィンコイルによって空気中の潜熱を管理する。このフィンコイルは水分を凝縮し、空気を脱水することで空気の熱量を大幅に低減する。冷却装置のエネルギー消費量は冷却フィンコイルの温度に大きく依存し、このフィンコイル温度を露点以上まで上げられれば消費量は大幅に改善される[232]。このため、結露以外の手段による除湿処理が望ましい。その一例が、熱交換器に塗布された乾燥剤に空気中の水分を吸着させ、装置から排出される廃熱を利用して乾燥剤から水分を脱着し、再生して繰り返し使用する方法である。これは、凝縮器上の乾燥剤が飽和した時点で冷媒の流れを逆転させられるような2つの凝縮器/蒸発器を備えることで実現できる。これにより凝縮器が蒸発器となり、その逆も同様となる[230]。
MOFの極めて高い表面積と多孔性は、水吸着応用分野における研究対象として注目されている[230][233][234][235]。化学的調整により、吸着・脱着の相対湿度や吸水速度を制御することが可能である[230][236]。
一部のMOFは自発的な電気分極を示す。これは特定の相転移温度以下で電気双極子(極性リンカーまたはゲスト分子)が秩序化することで生じる[237]。この長距離双極子秩序が外部電場によって制御可能な場合、そのMOFは強誘電体(ferroelectric)と呼ばれる[238]。一部の強誘電性MOFは磁気秩序も示すため、単一相のマルチフェロイック物質(英語版)となる。この材料特性は高情報密度メモリデバイスの構築において極めて興味深い。マルチフェロイック物質[(CH3)2NH2][Ni(HCOO)3]単結晶のカップリング機構は、自発的な弾性ひずみ媒介間接カップリング(spontaneous elastic strain mediated indirect coupling)であると報告されている[239]。